10月19日に訪韓した野田首相が、日韓の通貨スワップ「協定」を700億ドルに拡大するとの報道がありました。
ネットを中心に様々な誤解が生まれているため備忘録として。
(自分も誤解していた一人なので・・・)
まず、今回拡大された「通貨スワップ協定」は、「通貨スワップ」とは違います。
通貨スワップとは、
異種類通貨間で将来の金利と元本を交換する金融派生商品取引(ディリバティブ取引)。
大雑把に言えば、先物取引のように「半年後の決算日には、現時点で現在の為替レートより上か下か?」に保険をかけて、損益を得る”商品”。
通貨スワップ協定とは、
各国の中央銀行が互いに協定を結び、自国の通貨危機の際に自国通貨の預入と引き換えに予め定め一定のレートで協定相手国の通貨を融通してもらえることを定めた協定。
大雑把に言えば、「(今回の場合であれば)韓国さん、外貨不足(ドル)にお困りですか?それならば私の国があなたの国の通貨(ウォン)を担保に期限付きで外貨(ドル)をお貸ししましょうか^^」という協定国間での通貨の”融通”。
と、いう感じで日本からの一方的な援助ではなく、期限付きでドルを貸すだけです。
また今回のスワップ協定ですが、実際に発動される前にチェンマイ・イニシアティブの壁にぶち当たると思われます。
チェンマイ・イニシアティブ(CMI)とは、
1997年~98年のアジア通貨危機の経験を背景に、ASEAN+日中韓地域の通貨スワップのネットワークを構築する合意。
これにより、スワップの発動条件は、基本的にIMF融資とリンクしています(但し、締結されたスワップ総額の20%まではIMF融資とのリンク無しに発動可能)
とありますので、今回の場合も例外ではなく「一定額以上の融通についてはIMF」経由となります。
このため、融通したドルを韓国側が一方的に踏み倒したとしても、IMF経由で日本には戻ってくることになります。
IMF(国際通貨基金)も簡単に言うと、893やマフィアも真っ青の世界最強のサラ金ですので、踏み倒されることはほぼ無い(正確に言うと踏み倒せない)と言えるでしょう。
過去IMF経由でお金を借りた国の例として、法律を持って国民の財産を没収したり、利益の出ている企業は国営化されてIMFの借金の形に入れられるなど、「おまえの国の存在自体を消されたくなければ俺の言うこと聞いてきっちり金を返せや」とほぼ国を乗っ取りに近い状態になります。
その他にも、日韓の通貨スワップ協定として見た場合に、必ずしも日本側にメリットが無いわけでありません。
その一例として、
- 日本の主力輸出品の一つである部品や素材のお得意様が韓国です。年間300億ドル以上(※日韓の貿易収支で見た場合の差し引き後の額)を日本に対してキャッシュと落としてくれます。現在韓国デフォルト危機も出ていますが、そちらの回避先にも繋がり、とりあえずは300億ドル以上の黒字は引き続き確保できることになります。
- 日銀の為替介入等で塩漬けになっているドルを、ウォンと交換することにより結果的に円安誘導につながります。1であげたデフォルト危機を含めウォンは世界的に見れば信用度の低い通貨となります。そのウォンと交換することにより日本への信用不安材料が円安へ誘導するある意味皮肉とも言える結果を生み出します。
- 韓国と取引している日本企業の代金回収を滞り無く行うことができます。(1にも通じることです)
- 日本がドルで貸したお金は返済時にはドルで戻ってくるため、為替差損は発生しません。
と、経済的にプラスとなることもあります。
ただ、当然デメリットもあります。
先ほどあえて触れませんでしたが「一定額以上の融通についてはIMF」とある通り、一定額以内であれば協定国間での直接的な融通となります。
そのため今回のケースを単純に考えた場合、140億ドルを貸したまま焦げ付いてしまう可能性もあるということです。
さらに一番大きなデメリットとして、今回の話しはあくまで今までの協定を元にメリットやリスクを考えていますが、現段階で今回の協定条文は公表されておらず最悪を考えた場合にIMFは介さないなどと盛り込まれている可能性があるということです。
民主党と韓国の関係で見た場合にも、どうしても韓国側に有利な条件を与えていると考えてしまいますから、可能性を否定できないのが怖いところです。
日本が700億ドル使ってウォンでFXをやるようなことにも成りかねませんので(笑)
引き続き今後の動きには注目したいところです。
引用:
・財務省 -チェンマイ・イニシアティブ
その他いろいろなサイトより